2011年9月26日月曜日

イタダケナイ

すすめられて手にとった『銀行告発』という小説が、全編にわたり作者の自己満足が透けて見える内容で辟易した。この本、ホントに宣伝文句に書いてあるとおり売れたんだろうか?

出だしからイタダケナイ感じが漂う。見開きに作者の紹介が写真つきで載っているのだが、その写真と、主人公は自らをモデルにしているらしいことが頭に残っている間に、冒頭、いきなりベッドシーンである。好みは色々であろうが、私はあのオッサンの濡れ場など文字面で読み流すだけでも気持ち悪くなった。見開きに顔写真を載せないか、あるいは冒頭を書き直すかの、どちらかにすべきであった。さらに、主人公がバツイチ・ダンディー男という設定になっていて、益々イヤな予感が募る。この主人公は、作者「自身」なのか、それとも「そうなりたい自分」なのか――どちらにしてもイタダケナイので、知りたいとも思わないが。

この本がホントに宣伝文句どおり売れたんだとしたら、元銀行員が銀行のイタダケナサを曝露しまくったストーリーが受けたのだろう。しかし、イタダケナサに直面するたび、憤るか泣くかしかしない主人公の感情描写の浅さったらない。ナルシストであろう作者の筆致から、主人公が“水戸黄門状態”であることは読み始めてすぐに分かってしまう。どんなに敵が切りつけてきても刀の方が避けてってしまう、あの感じね。だから、最後の大団円なんか、作者(=主人公)が『オレハヤッタゾ』と自画自賛しながらひとり悦に入って感慨に浸っているのが見苦しくさえあり、正気か?恥ずかしくないのか?と読んでいてドン引きだった。

大組織の底意地の悪さと闘うという構図は、ここ最近読んだ中では、『下町ロケット』『沈まぬ太陽』との共通点と言っていいと思うが、読後感が違い過ぎる。それは、丹念な描写の有無であり、そこにあらわれる作者の謙虚さではないかと思う。自己満足型の作家には、そのような主人公しか描けないのかもしれない。

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