確かめたいことがあるから、松本清張2冊目。上下2巻本だが、出張前の週末にサクッと読めた。
元々、サスペンス(というより、ジャンルを問わず小説全般)をそれほど読むわけでもなく、松本清張も名前といくつかの代表作の題名を知っている程度なのだが、どうやら繰り返し映画化、ドラマ化されている有名な作品のよう。
主人公は、高名な医者の跡取り院長先生、絵に描いたようなザ・放蕩息子。最初の死亡事件(実は殺人事件)を除き、2人目以降さしたる心の葛藤もなく次々と殺人を「思いつく」ことに、こんな調子じゃ30過ぎまで犯罪と無縁でいられたことが説明つかなくなると思った。もっとも、心の葛藤――この主人公の場合、それは人を殺めることに対する罪悪感ではなく、犯罪が発覚することへの怖れだけれど――は殺人を犯したあとには必ず襲ってきて、やがて尻尾をつかまれる原因ともなる。一度そうしたイヤな恐怖を味わっているのに、なお、軽々しく次の殺人を思いつくのは、ウソを隠そうとしてウソを重ねる心理なのかな。ウソと殺人は違うけれど。
最近のTVドラマ化では、『黒革の手帳』『けものみち』につづく三部作の最後として本作が選ばれたのだそうな。前の二作と同じ女優を主演にするために、あえて主人公を看護婦(かつ主人公の情婦)にしたということだが、あの女優には是非、プレイボーイの主人公を手玉に取り、最終的に財産まで掠めとってしまうデザイナーの役を演じてほしかった。主役とするには、原作の中での描写が少な過ぎるということかもしれないが、本当の「わるいやつ」は彼女を置いて他にいないと思うな。主人公やほかの取り巻き情婦たちにも、それぞれに「わるい」ところがあるわけだが、どちらかというと頭の軽さと呆れるほどの性欲の方が目を引くわけで。
さて、確かめたかったことの、今のところの結論だが、やはり意図的に早い段階で犯人を明示しているようである。もっとも本作の場合、最初の死者を誰が殺したのかについてだけは最後段まではっきりせず、最後の最後に、どうやら主人公が情婦に一杯喰わされ濡れ衣を着せられていたらしいことが分かる。前後して、あの人からもこの人からも、騙していたつもりが騙されていたことが次々と明らかになり、こうまで見事に主人公のトホホっぷりを描けるところが「松本清張」なのかな、なんて思ってみたり。
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