『南極料理人』
南極大陸ド真ん中での隔離された集団生活は、夏のキャンプ場と訓練所とドミトリーと異国での生活の、ちょっとずつを全部合わせたかのような――つまり、案外共感できる部分が多い映画だった。日本食に対する執着も、私にとってはごく日常的な光景だったり。1年間以上ずっと8人きり、というのだけは、さすがにマネできんと思ったが。
『舟を編む』
何か国内でたくさん賞をとったとネットで見たので、早速レンタル。キャラクター設定が極端なのは分かりやすくてウケがいいのだろうが、どうもストーリーを追うだけの映画だった気がする。終盤に異動してきた女性社員役の女優がまわりを喰ってるなあ、と思ったら、最近国際映画祭で賞をもらったばかりなのだそうだ。
『敵こそ、我が友~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~』(2008年)
ヴィシー政権下のフランスで虐殺を指揮した元ナチ将校が、戦犯にも拘らず共産党狩りに利用価値を見出した米国CIAの庇護を受け、戦後南米ボリビアに渡りテロ、弾圧、拷問技術を右派・軍事政権に「技術移転」しながら生きながらえる、という話。1983年にやっとフランスへ引き渡されたが、刑務所内で病死しまんまと天寿を全うした。
ナチ時代の虐殺は親衛隊内の命令によるもの、つまり、非人道的だったかもしれないが法的には合法――傀儡とは言え当時のフランス政府がユダヤ人狩りに協力していたことも忘れてはならない――だったとしても、戦後の地下活動は弁解の余地が無かろう。テロや拷問技術の専門家にはいくら対価が高くてもなりたくないものであるが、彼がこれだけ長い間生きながらえたことからも分かるように、そうした技術は情けないほどに需要があるのだ。英語とフランス語とスペイン語が入り乱れ、画に集中しづらいドキュメンタリー映画だった。
◇ ◆ ◇
『日本のいちばん長い日』(1965年)
少し前に、226事件を描いた映画『226』(1989年)を観る機会があり、ふとこの映画のことを思い出した。御前会議で敗戦が決まってから玉音放送までの24時間(=いちばん長い日)に焦点を当て、一般にはもうあまり記憶されていない陸軍の一部が起こしかけ、結局失敗したクーデター「宮城事件」の顛末を描く。
何年も前に初めてケーブルTVで目にした時は額面通り歴史映画として鑑賞したが、今回は“官僚映画”だなと思った。表向きは“国体護持”(=天皇制の存続)が最重要だと言いながら、天皇の意向に反し本土決戦を主張してみたり、通らぬと分かるや事もあろうか天皇の寝所があった御文庫に銃口を向けてみたり、国民により大きな犠牲を強いる本土決戦が必ず全国民から支持されるはずだと本気で考えていたりーー階級は将校ながら、陸軍省の一介の課員に過ぎない首謀者たちが、どうしてこうまで筋が通らぬオメデタイ計画が実行できると思ったのか、ごく自然に疑念がわく。
現在の目線で見ると、つい「それは陸軍が愚かだったから」と結論づけたくなるが(勿論一定程度は正しいだろうが)、実はこうした内部完結型の世間知らずな全能感と組織保全本能(※)こそが官僚の本質なのであり、この映画に描かれる愚かなやり取りとそう大差ない非生産的な議論が、コスト意識ほぼ皆無な人々によって今日も至る所で繰り広げられているのである。
(※)ポツダム宣言は帝国陸海軍の武装解除も求めていたので、受諾はすなわち彼らの仕事だけでなく帰属組織そのものの消滅を意味した。御文庫に銃口を向けたことからも分かるように、恐らく無意識にせよ本音では天皇制よりも陸軍省の存続の方が最大関心事であったに違いない。
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