プレゼン内容から(担当以外)
- 経済概況
- 1人当たりGDPだけでなく、 富の源泉が多様な産業にばらけていることにも言及。ひとつの産業に依存し過ぎると、その産業が倒れた場合(たとえば工場閉鎖など)、税収減や雇用減という形で市も一緒に倒れてしまい、借金も返せなくなるが、多様な産業を抱えていればそのリスクは低くなる。
- チームメイトはこれを"Low concentration risk"と表現していた。
- 市の財政状況
- 市はNon-profitなので、Equity(株式)は発行できない。バランスシートにあるのはAssetsとLiabilitiesだけである。
- Capital AssetsとLong-term Liabilitiesがマッチしていることを示す。日々の運営費は売上や税収など流動性の高い収入源から賄い、大規模な設備投資は長期的な借入をして賄う。流動性がマッチしている(to match maturities)ことが重要。自分なりに噛みくだいてみるために、仮にミスマッチがあった場合を考えてみると:
- 大規模インフラ建設の資金源に、売上や税収といった年ごとに金額が変化しやすい(=流動性が高い)ものを充てると、年によって過不足が生じやすくなり、不足した年は工事が止まるなどしてしまうため都合が悪い。
- 従って、長期の工事が見込まれる場合は、長いこと借りっぱなしに出来る借金(=Long-term debt)で資金手当てするのが適当である。
- 逆に、日々の運営コストは、工事費用などに比べはるかに調節しやすいものなので(たとえば、文具を節約するとか、出張手当を削減するとか)、流動性の高い収入源を充てることで問題ない。
- デフォルトリスク(市が借金を踏み倒すリスク)を説明するためにRevenue Bond Coverageという指標を使用。ある年の収入見込み額が、その年に返済予定の借金の何倍あるかを示す指標で、1倍以上で可、2倍以上で良、3倍以上で優なんだそうだ。
- プロジェクトの財務分析
- ボンドの償還財源(=借金返済資金)は水道局の将来の収益(Revenue)なので、需要予測をして売上を見積もるのがテッパンだ。(売上)=(利用者数)×(水道料金)。
- ただし、今回のケースではニューヨーク市水道利用者が近年微減傾向にあり、収益増のために水道局は毎年水道料金を上げていた。このパターンは開発途上国ではまずないことなので、興味深かった。つまり、人口(=利用者数)はいつも右肩上がりだし、公共料金を上げ続ければ直ちに財布が追い付かない顧客を失ううえに、たぶん政治的にも難しい。
- 質疑応答で『利用料金を毎年あげ続けるのは、持続性およびモラルの面で如何なものか』という質問が出たが、”市長”から、それは金額にすれば数ドルのことでニューヨーク市民の平均年収を考えれば微々たるものに過ぎず、かつ、そのお金は水道システム改善を通じて利用者に利益還元しているため理解も得られていると認識、と回答。堂々としたものだった(笑
- 『水道システム改善10か年計画』の支出予定と、ボンド償還予定(毎年1.6十億ドルでほぼ一定)を示し、計画的に支出していることを説明。
- ボンド発行条件(発行額、種類、償還期間、利率、オプション)
- 発行額: 5億4,181万ドル
- うち、 シリアル債 …2億9,184万ドル
- うち、 ターム債 …2億5,000万ドル
- ボンドの種類: レベニュー債 (…償還財源はボンド借入金で行う事業の収益)
- 償還期間:シリアル債[連続償還債]とターム債[一括償還債]の組み合わせ
- シリアル債…1~20年間のいずれかを選択
- ターム債 …29年間(1億ドル)か30年間(1.5億ドル)
- 利率[Interest rate]と利回り[Maturity]
- シリアル債…利率2.5~5%、利回り0.49~4.19%(期間に応じて異なる)
- ターム債 …利率5%、利回り5.20%
- 発行体は10年目以降、繰り上げ償還をしてもいい権利を持つ(オプション)
- 発行体は償還期間30年間のターム債(1.5億ドル)を一部または全部を、減債基金(Sinking fund)を使って繰り上げ償還する権利を持つ
- 借入金の使途
- 建設基金積立 … 4,067万5,253ドル
- 借換債積立(Refunding bond) …3億1,592万7,787ドル*
- 短期約束手形支払(Commercial paper notes) …2億 3万9,359ドル*
- 引受会社手数料 … 285万 114ドル
- ボンド発行手数料 … 39万1,217ドル
- ボンド収入合計 …5億5,988万3,730ドル
- 発行時プレミアム … 1,807万3,730ドル
- 発行ボンド額面価格 …5億4,181万 ドル
- 上記の通り、ボンド発行による借入金のうちほとんどの部分(青字部分、92%)が既存の別の借金を借り換え(=借金で借金を返す)ための資金であり、金利が下がり続けているというマーケット事情が背景にある。
- 当初、ファイナンスの彼が『事業の内容など興味ない』と言い放った理由はここにあり、彼の言い分としては今回借り換えるボンドの格付けは高く、 また発行時に十分なデューデリジェンスも行ったであろうから、今回改めて事業内容を精査する必要はない、というロジックだった。
- 確かに、事業の存在意義を根本から改めて問うよな精査は不要に思われたが、一方で付け替えた借金が何に使われるかぐらいは投資家だって知りたいのではないかと思った。私以外のチームメイトもそれには賛同してくれたし、教授がわざわざエンジニアリング・アドバイザーを置いたのも同じ理由だった。
- 厄介だったのは、そのことを知るための情報が分厚い文書の各所に分散しており、資金の流れを数字で追うのに時間がかかったが、集めた情報のピースを集約してみると、実は青字部分のほとんどが最終的に建設基金に積み立てられることが分かった。建設基金とは『10か年計画』の事業資金である。ここまで追ってみて、はじめて、今次のボンドが『10か年計画』実施のための事業資金を集めるために起債されるものであることがハッキリするのである。
- 他チームのボンドにも借換債が頻繁に登場したが(全米で金利が下がっているのだから当然だ)、そのお金が最終的に何に使われるのかひと言でも言及したチームは我われ以外に無く、差別化のポイントとなったと思う。
- 法的拘束力
- レベニュー債の償還財源は事業収益(Revenue)なので、借金を返すアテとしてこの事業収益をちゃんと取り置いといてもらわないと困る。このためニューヨーク市水道局の事業収益使途には法的拘束力のある優先順位が設けられており、その順番に資金配分をしないといけないことになっている。
- 今次起債のボンドは8段階ある優先順位の6項目めに当たり、優先順位は高くないものの、Revenue Bond Coverageが3倍以上あることから、きちんと資金手当てされる見込みであることが分かる。
米国インフラ・ファイナンス(1)
米国インフラ・ファイナンス(2)
米国インフラ・ファイナンス(3)
米国インフラ・ファイナンス(4)
米国インフラ・ファイナンス(5)
米国インラフ・ファイナンス(6)(完)
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